2014年7月1日火曜日

感謝の気持ちを忘れずに




「そろそろ昔お世話になった先生方に挨拶に行きたいね。きっと皆さん喜ぶわよー。」
以前何度かそんな事を、何かを悟ったかのようにうちの母が言っていた。でも私は毎回「もう30年も面識がないのに.....。」と返していた。

先生方というのは、私の命の恩人である医師の先生方である。私は「ホルトオラム症候群」という珍しい障害を持って生まれた。幼少の頃は病院で過ごす日々。国内で優秀な医師の方々が、この珍しい病気に立ち向かいたくさん励ましながら私を救ってくれた。私にとってはまだ物心がつく前の話しで記憶もほぼないせいか、これまでは母の言う『挨拶』にピンとこなかった。しかし先日、本当に挨拶をしなければならない状況がやってきた。ーというのも、私が過去に入退院していた事実を証明しなければならなくなったのだ。もう30年も前の話し。病院に問い合わせても、もうカルテは残ってないらしい。(そりゃそうだよね。)すると今度は、親族以外で過去の事実を知る方に「第三者の申立書」を書いてもらうよう言われた。親族以外....頭に浮かぶのは、かつて私を看てくださった先生方だけだった。「挨拶に行こうよ。」そう言った母の言葉が思い出される。

住所を探し手紙を書く事にした。心を込めて書きたかったので、手紙はあえて手書きにし一生懸命書いた。この手紙を読んだ方々はどのように思うのだろう....。(なんでこんな事に協力する必要があるのか。)と思われるのか(懐かしい元気かな。協力してあげよう。)と思ってくださるか、それとももう記憶にないか....。色々考えながら一生懸命手紙を書いた。そしたら皆私の事を覚えてくださっていて、昔を懐かしみながら快く一筆書いてくださった方もいた。期待以上の長文と写真まで同封して送ってくださった方もいた。電話で、「お母さんとお父さんは元気?」そんな話しをして、笑顔で答える反面、私は感動してしまい目頭が熱くなった。こうやって急なお願いに答えてくださるのも、当時両親が私の為に一生懸命頑張ってくれた事と、お医者様方の温かい気持ちがあるからなのだなと思った。

感動もあったけど、実際なんだかむなしい現実もあった。世の中色々な考えを持った方がいるのだなと。
私の周りには医療関係に携わっている人が多い。兄は医者、旦那は臨床試験の仕事をしている。幼い頃から病院とは密接に関わってきたし、きっとこれから先も色々あるだろう。常々周りから色々な話しを聞いていると考えさせられる事が多い。医療関係の仕事も色々あるだろうけれど『人の助けになる』という人として根本的な使命を持ち仕事ができる事を羨ましく思う。かつての私はそこまで余り『人のため』という課題に真剣に向きあえていなかった。でも、考え方を変える事ができたのは、周りで本来の道を外れる事なく人の為を思い真剣に頑張っている方々と接する事ができているからだと思う。私も沢山の方々に助けられ守られて今がある。だから私自身も力を付けて世の中に恩返しをしたい。昔NYに住んでいた頃言われた事がある。「人に何かをしてもらったら、何倍にもして返す。それが人付き合いのコツ。」だと。15年ぐらい前に言われたその言葉は今になっても忘れられない。若い頃の私はただ一方的に助けてもらうだけで、ちゃんと感謝する事ができてなかった。その言葉を聞いて、それまでの自分を恥ずかしく思うと同時に反省し、『感謝する』という事を学んだ。仕事で頂くお金は『感謝に対する対価』だから、仕事は本来『人の力になる事』を追求する為に存在しているはずである。『デザインの力で、いかにどこまで人の為になれるのか。それをどこまで追求していけるのか』それが残された人生の内の私の課題だと思う。




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